結局あの後も、私が落ち着くまで、海斗の腕に制されたままだった。 動けずに、ただ机の冷たさと海斗の熱を感じていた。 半ば、海斗の甘い香りに酔いそうになりながら。 でも不思議。 こんなに独特な百合のような香りがするなんて。 家に、花でもあるのかしら? そうでもなければ、こんなに強く香らないはず。 その時、ふと浮かんだ情景。 西条家のお庭。 むせかえるくらい花の香るお庭に一日中居たら、身体中に染み込んでしまいそう。 それこそ、酔う程に。