『ありがとうございます、頼稜さん』 なぜか、口からこぼれる。 「ありがとう」と、私から言いたくて。 頼稜さんは、少し恥ずかしそうにして、俯いた。 『御礼など、言われる身ではございませぬゆえ』 きっと、拓には見せない姿ね。 彼の前では、いつでもしっかりしているから。 一番信頼のおける、付き人として。 『拓は?御両親とまだお話中かしら』 『はい。恐らく』 早く会いたいわ。 さっきまで一緒に居たけれど、もう恋しい。 触れられる距離に居ないと、寂しい。