「ヒナコ。
さっさと来いよ。」

日向さんが、
私の手をとり連れていく。

初めてつながれた手に
ドキドキした。


皆から死角になる壁際で、
おもむろに、彼は口を開いた。

「おまえも志央の事
構ってんなよ。
契約期間あるんだから
割り切っておけよ。」

「あ・・・。」

言葉を失った私の額に、
彼は、軽くキスをして笑む。

「いくぞ。」

「あ。はい。」

顔が赤くなってるのが
自分でわかって、
軽く指先が震えた。

「どうしたの?宝さん。
顔赤いよ?」

事務所のスタッフに言われる。

「え。そうですか・・・?」

ドキドキしながら答えた私を、
日向さんが、おかしそうに
含み笑いを浮かべて見ていた。

なんだか恥ずかしくて、
彼の横にうつむいたまま
座るしかなかった。

「どうしたの?ヒナコ。
何かあった?」

元田さんが、静かに尋ねる。

ここの人達って、
みんな優しいんだ・・・

「何もないですよぉ。
やだなあ、何かあったように
見えますか?」

「見えるね。」

答えた自分に
志央が、即、反応した。

「ほんとに?
そんな風に見えるのかなあ。」

声が上擦る。

額にキスされただけで、
こんな動揺するなんて・・・。

きっと

日向さん、呆れてるよね・・。