神様のきまぐれ

 

「コラ。志央!

その子、
からかってんなよ。」


軽いハウリングと共に、
スピーカーから降り注ぐ
日向さんの声。

べースドラム用に
セッティングされたマイクを、
ちょっと自分の方に引いて、
たしなめてくれる。


「・・・へぇーっ・・・。
珍しいな。」

志央はそういって、
楽しそうに、
ステージの方を振り返って、
大きく手をふる。

そして、再び私の方に
クルッとむきやって、
二人の間にある背もたれに、
頬杖をついて言った。


「いっつもね。
俺が誰かに何かしてても、
放置プレーなのにね。」

「えーっと・・・」

言葉を失う。


「志央、その子はダメだ。
おまえの取り巻きとは
訳が違うんだぞ!」

明らかに、
ご機嫌ななめな表情で、
日向さんは、階段状の
昇りの通路を、
こちらへ近づきつつ咎める。


「志央、おっとりした子、
苦手だろ。

ヒナコは
随分天然入ってるぞ。」