・・・・彼は・・・・
なんて
得も言えぬ表情で
歌うのだろう。
豊かな声。
やがてリズムがのり、
ベースラインが加わる。
ドラムが入り
このリズムが完成する。
専属バンドと
いったところだろうか。
スピーカーから感じる
ベースドラムの
圧倒的な存在感に、
自分の鼓動が重なる。
歌詞は掴みとれないけど、
眼を閉じてすら、
その曲の深意が
ひしひしと伝わって来る。
気付けば、
涙が
あふれていた。
涙を拭きもせず、
正面を見つめる。
日向さんが、志央に近寄り、
なにか耳打ちするのがみえた。
彼らが、
こっちをみた・・・ように
感じた。
ボーカルの青年は、
ニッと笑んで
マイクを持ち、
すーっと息を吸う。



