かちゃん。

閂の外れる音が聞こえて、僕は振り返った。

木製の扉が、金具を軋ませながら開く。

そこに――僕が――立っていた。

皆川浩介の、本物が、いた。

「!? なんだ、君はっ!?」

皆川浩介が、驚きに目を見開く。

歯噛みした。こんなはずじゃなかった。本来なら、本来ならそう――

千里ヶ崎ミシェルが、本を読まないから。

本は、読まなければ意味がないのに。

千里ヶ崎ミシェルが本を読まなければ、意味がないのに。

本が読まれなければ、僕は彼女を八つ裂きにできないのに――!!