「化け物の目的を考えてみたんだよ。化け物は前に話した三原則を満たしていなければ、化け物たりえない。だけどね、皆川くん。化け物は化け物であるがゆえに、真の化け物ならばなおのこと、目的を持つことができないの」

「はあ……」

「つまり、本能と衝動にのみ従うのが、化け物たる化け物の、化け物らしい在り方というわけよね。では、そんな化け物がどうして、わざわざケータイに擬態し、本能とも衝動ともほど遠そうな、面倒くさい行程を経て、人間を襲うと思う?」

「さあ」

答えはなんであれ少なくとも、僕には千里ヶ崎さんの頭の中は見抜けません。世界中のだれだってそうだ。

「ふふ、想像すれば簡単なことだよ、皆川くん。化け物を操っている者がいるのね。その者の目的が、化け物の目的となるわけ。ほら、ここにストーリーが生まれたね。皆川くん、祝福してくれるかな? 新たな未知への扉が出来たんだよ」

「……」

黙り込んでいると、彼女はとても気だるげに身動ぎした。

ごそごそ動いて、ソファーの上でうつ伏せになる。当然ながら体が収まらず、白い足がすらぁと床へ垂れていた。

そのたおやかな指が、重鎮な机の引き出しを開けた。