「幼なじみ?」
「そっ。
くされ縁みたいなものだよ。」
あたしには、幼なじみがいない。
小さい頃は、ずっとひとりだった。
「雅がうらやましいよ。
あたしには幼なじみなんていないから。」
「そっか。
人それぞれだよ。」
キーンコーン。
チャイムが鳴る。
机の中から、教科書とノートを取り出す。
「やっべ。
マサ、おまえルーズリーフ持ってない?」
「忘れたお前が悪い。」
「ひっでえなあ。」
あ……、椎名くんノート忘れちゃったんだ。
「椎名くん、………良かったら使う?」
あたしは、机の中にたくさん入っているルーズリーフの中から、一枚を取り出した。
「さんきゅっ、海野。」
椎名くんは三日月の目みたいにはにかんだ。

