何とも言えぬ顔をしている。



……可哀想に。 



この子の仕事はなくなった。



率直に言ってしまえば、用無しなのだ。



ここへ無理矢理連れて来られて厳しい訓練を受けさせられたと思ったら今度は放置だ。



名を奪われてただ坊とだけ呼ばれているこの子は、何て可哀想なんだろう。



芦多はそっと手を伸ばした。



子どもは上目遣いに芦多を見上げる。



そして頭をすり寄せた。



昔の自分のようだ。



……愛に飢えている。



誰かにかまって欲しいんだろう?



芦多は心の中で語りかける。



子どもは黙って芦多の着物にしがみついている。



と、影が差した。



灯世だ。



「この子の名前は?」


「ない。」



灯世は驚いて芦多を見上げる。



「そうですか…。」



よしよし、と灯世が頭を撫でる。



坊は顔を歪めた。