―みんながベンチを
出ていく中、
あたしはスコア表や
飲み物などを片づける。
「大和って何で
幽霊部員なんだろうな」
「あの場面で
ホームラン
打つくらい
上手いのにな」
出ていくみんなの中から
そんな会話が
聞こえてきた。
そう。
あの時の大和君の
打球はぐんぐん伸びて
ホームランとなった。
あたしたちは
崎美君の体力を
温存したまま
決勝戦に挑むことが
できるのだ。
本当ならあたしは
誰よりもこのことを
喜ばなきゃいけないのに
崎美君の誤解が
とけてないことを
思い出すと
素直に喜べなかった。
「茜」

