「そういう事は、情婦としな。
私の仕事じゃない。」

手の甲で、耳を拭い、
腕を解いた。

「本来なら、情婦に迎える
ところだったんだがね。
惜しいねえ。
ムーンといい、君といい、
余りに素性が怪しいからねえ。

殺すには、惜しいから、
最も死線に近いポジションを、
用意させてもらったよ。」


繰り返し、
殴り付けられる扉が、
軋みだす。

鍵がしなり、もう、そろそろ、
それは大破することが
見てとれた。

私達は、どちらからともなく、
扉から距離をとるため、
それに背を向けて歩き出す。

「私は、モニターから、
様子を見せてもらうよ。」

サタンは、
娯楽映画を観るような軽さで、
傍観を決めこみ、
部屋を後にした。