「いいのですか?」

彼女の問う声が聞こえる。


「私を主に無断で
お連れになれば
お怒りを買いますよ?

私から、一報
さしあげますので・・・」

『私は特別』とでも、
いいたいか?

『名無し』・・・よ

「一緒だ。
あのオトコは、
私を陥れる
きっかけが
欲しいだけだ。

それとも

オマエ自身、
あの頃より、
激しい調教を受けて
アイツに従順になったか?」


彼女のプライドを
揺する事など
たあいも無いことだ。


彼女は、なにか策を
考じているのだろう

しばし無言でいた。

「・・・わかりました。
参ります。」

やがて、そう答え
私の横に並び歩き出す。

「ところで、サタン
私の名は?」

『名無し』のコイツは
当然の如く、
名も戸籍もない。


「『マリア』だ。
それ以外に何がある?」


私は、当然の
名前を告げる。


「・・・そうでした。
私めの・・・
愚問を、
お許しください。」



「私は・・・『マリア』」


噛み締めるような
声が聞こえた。