親父が、これほどの
資料を取得しながら、
その企業を、告訴も
マスコミなんかに告発も
できなかった理由

それは、簡単な事だった。

俺に、引き継がれた今も
その最後の課題が大きく重く、
のしかかっている。


この組織の
H&T社の株式占有率を
実質七割占めている
個人がいて。

ビル=オーウェンと
呼ばれるオトコなのだが。


親父は、
この男の素性を調べるべく、
この組織に潜入したようだ。

数社ある大口株式保有企業、
個人投資者の口座からも、
この男へ
資金が流出していた。

実質の企業所有者と
いえる証拠を
いくつも手に入れていた。

その、並ではない資金もだが

株主総会やあらゆる重要な
局面での会合にも、
この男の存在は、
確認されておらず、
架空人物疑惑も
浮上していた。


限りなく
闇に近い
黒な男だった。