車は、ハイウェイを飛ばす。

遠近感を失うほど、
巨大な塔に向かって。


周りに見えるものは、
灰がかった、
いつもの空ばかりだ。


たまに、バックミラーと
サイドミラーを確認するけれど
濁った雲以外に、
気の利いたモノが
映る様子はない。


ハンドルを持つ手を
離したくなるほど、
ただただ続く、
真っすぐな道。


横で眠るムーンは、
昨日眠れなかったんだろう
起きる気配もない。


抱きしめてあげれば

彼は、安らぎ、
眠れたのだろうか。


こみ上げてくる何か
後悔のような感情が
私を蝕む。



多分、寝てないだろうと
私が運転をかってでたが
どうやら、正解だった様だ。



彼は、サイドシートを
限界まで倒して、
黒いサングラスを
かけて眠っている。


結局、
彼の考えている事を


聞き出す事は叶わなかった。


何を、抱えているのだろう?

何を、怯えているのだろう?


それは


私に踏み込めず
救う事も出来ぬほど

重い何かなんだろうか。