適当に手を振って、器具を洗い始めた吉野に軽く挨拶をした。
「一樹、もう帰るの?」
「うん、まあ」
「晴喜のところ、行く?」
「多分」
「じゃあ、ちょっと待ってて」
吉野は手を布巾で拭うと、出来たてのケーキのスライスをいくつか皿から摘まみ上げ、手早くラップで包んだ。
「これ、持ってって」
「うん」
「渡せないようなら、臨機応変に処分しちゃって構わないわ。
……もちろん、お腹の中にね」
「捨てないって」
「どうかしら?」
吉野は、笑った。
つられて仕方なく、一樹も笑う。
何も考えていなくても、自然と出来た。
ああ、愛想笑いって、こんなにも簡単だったんだ。



