思えば、何も一回の毒で殺す必要など無いわけで、
例えば確実を狙うのであれば、
少量ずつの砒素などを、
度々持って来る手料理の中に入れる方法だって、あったはずだった。
だが、彼女はそれをしなかった。
『私、三人家族だったんですけど、
今でもこうして三人で食卓囲めるなんて、
とっても嬉しいわ…』
――彼女が四歳の時両親が交通事故で死んで、
それからは祖父と一つ上の兄との三人で暮らしていた。
中学生の時に兄がいじめを苦に自殺を図り、
去年の十二月に祖父も病死して、一人になった。
彼女はアマチュア劇団に所属していたが、
その頃にはもう辞めている。



