それで、昨日の夜。先輩のお姉さま方からジルが小言を言われている現場に出くわしてしまったわけで。

 そりゃ自分より多く稼いでいるのが年端も行かない少女だったら妬みもするでしょう。

 それでも街娼よりいい稼ぎなんだから、イーストエンドの私達がぐだぐだ言える立場じゃないことくらい分かっているでしょうに。

 もう、思いっきり割り込んじゃった。

 よくもまぁ私の口はあんなにまわること。自分でもびっくり。

 だめだなぁ。ストリートでやってた頃の癖が抜けない。

 ここは争う場じゃないっていうのに。

 きっと嫌がらせはジルから私に代わるんだろうけど、あの子と違って私は慣れている。大丈夫大丈夫。

     一八八八年 七月二十日 メアリ・マーレイの日記