──全部嘘だったんじゃん。


でもそれも、お互い様か。



「メガネ、昨日は掛けてなかったじゃん……?」

「メガネは仕事用。お前こそ、あの髪の色、どうしたんだ?」

「スプレーで……染めた」


私の答えを聞いて、先生はクスっと笑った。




「……高岡真央」

「はいっ」


急にフルネームで呼ばれてびっくりした。


「これから一年、よろしくな」

「は、い」





「琢磨」

昇降口まで行くと、琢磨がクラスの下駄箱に寄り掛かるようにして立っていた。



「ごめん遅くなって。もう、帰ってるかと思ったよ」


新入生代表はどこまでいっても有名人。

こうやって話してる間も、チラチラ見られながらみんなが通り過ぎる。


私のこと待ってる間も、ずっとこんな感じだったんだろうな……。



「あいつ、何だって?」

「ん? あ……家のこと……?」


まさか昨日ナンパされた人だった、なんて言えるわけもなくて、適当に言葉を濁した。



そういえば家のこと、知ってんのかな?