話は一度始業式の日のHRの時間までさかのぼる。

洸と同じクラスになった春野姫が母親に言われ
昨日あった弟のことについてのお礼と生徒手帳を
返そうとしていた。

しかし、姫は洸のことが好きだったが今まで数回しか洸と
話したことがなかった。

(これは神様がくれたチャンスだわ・・・今まで
洸くんと話すきっかけを作れなかったのに・・・

今日こそは洸くんとお話をするわよ・・・ファイト私!!)

「あ、あの天地君・・・」

精一杯の声を出して姫が言う。

しかし教室の中でみんなの話し声がうるさく姫の声は
かき消された。

「ほらそろそろ行くぞ。」

「わかった。今行くよ。」

「あっ・・・」

(渡せなかった・・・どうしよう・・・)

プツン

「てめーら少しうざいんじゃい!!もう少し静かにせんかい
このボケが!!おかげで渡せるもんが渡せなかっただろうが!」

この姫の一言で教室は一気に静まり返った。

「あらやだ、私ったら」

姫は俗に言う二重人格者だった。

しかし幸いに、このことを洸たちはまだ知らなかった。