朝から気持ち的に疲れる。ホームルームが終わって、授業が始まっても二人はチラホラと私を見てくる。


これは、休み時間にもう一度事情聴取が行われるに違いないと確信した。


そんな状態だから、授業の内容も全然頭の中に上手く入ってこない。


黒板に書かれた文字達を自分のノートに写すだけで、精一杯。


そして、その作業を終える頃にチャイムが鳴った。


その合図と同時に、二人の芸能レポーターは私の席へと歩み寄ってきた。


予想通りの展開に、机の上に教科書やノートを置き去りにしたまま、私はスカートを翻しながら机の迷路をスイスイと進んで廊下へと逃げた。


「コラー!千恵、待ちなさーい!」


待ちなさいと言われて、素直に待つような私じゃない。


生徒の波を掻き分けて、とりあえず上の階へ、上の階へと必死に逃げた。


気づけば、二人の声は聞こえなくなり、近くにいない事を確認した。


周りにいないと確信すると、私は屋上の寂れたドアの前に居る事に気づく。


呼吸を乱し膝に両手をあて腰を曲げながら、私は、静かにその扉を見つめていた。