そのまま


私は全力で走った。

こんなに走るのが速かったっけ?


って思うぐらい。


わけわかんないけど、呼吸がどんどん乱れていくのと同時に心も少しずつ乱れていく。


なんで、今、必死に走ってるの?


私の頭の中がぐしゃぐしゃになって、いろんな文字が飛び交っていく。


でも、私の前を車みたいに文字達はあっさり通り過ぎていくの。


浮かんでくるのは、転校生の顔だけ。


そう…。


原田大樹の顔だけが、あの少しだけ見せた無邪気な笑顔だけが私の頭の中を占領して離れない。


それは、頭を横に激しく振ってもけして消える事はなかった。


いつも通る道や景色、空や雲。


私の目には、今日だけは、今だけは全てがモノクロのように映った。