〜桜side〜



「………はぁ」




桜は自室のベッドの上でため息をついていた。



チラッと視線を机の上にうつすと、そこには編みかけのマフラーがあった。



編みかけのマフラー、といっても形はほとんどできてない。



それどころか、マフラーに見えるかも怪しい。



百人アンケートで、これは何でしょう、と聞いて、答えはマフラーです、と言ったら目を丸くするだろう。




それほど形はいびつだった。




「なんかもー…いろいろ嫌になる………」




実はこのマフラー、奈津のために編んでいたのだ。



あの、文化祭の打ち上げ以来、奈津の態度がどこか変だと感じていた。




奈津は、桜の顔をじーっと見て、それから、やっぱり酔ってたんだよなぁ、とか、ほんとにそんな風に思ってんのかな、とかぼやく。




あの日の記憶が全くない桜にとって、これほど気になることはなかった。