「で、なんか用か?」




眠そうに、しかし、少し警戒しながらたずねる。



こんな朝早くから電話してくるぐらいだ。



パターン的には、ろくでもないことである確率90%越えである。




『あ………えと』




桜が口ごもる。



これで、ろくでもないことである確率がさらにグーンと上がった。





『………今日、何の日かわかる?』




――今日、何の日………?




奈津は携帯を片手に頭をひねり始めた。




――今日は………何だ?


たしか、8月10日だから…




………野党の日か?


今日、野党の日だから付き合いなさい?






………わけがわからん。



あの日以来、奈津は不眠症に苛まれ、寝不足でまともに思考が働かなくなっていた。




あの日…とは、亜紀に告白されたあの日、である。