危険な彼女

奈津はあの、黒くて、見たことのない物体(桜の弁当)を思い出していた。



食べた後に胸焼けに襲われるあの弁当。



食べるのさえ、一口食べるのさえ勇気が必要となる弁当。




あれを毎日作ってくるなんて、ある意味嫌がらせにも思えてくる。





「………奈津君、


君は、何か変な思い違いをしていないかな?」




「な、なにがですか?



…まさか、俺の味覚に問題がある、とでも………?」





そこで、梓さんは頭を抱えた。



『これは桜も苦労するなぁ』、と聞こえたのだが………





はっきり言います。



苦労してるのは『俺』です。





「はあ………


奈津君、桜はね…
君が嫌いなわけじゃないんだよ?」




「………いやいや、嫌いじゃないやつに殴ったり蹴ったりしますか?普通………」





俺がそう言うと、梓さんは困ったように頭を掻いた。



本当に困っているらしい。





「………嫌よ嫌よも好きの内…」




「………え?


何か言いましたか?」




「………ふぅ。

まあ、いいや」





そう言うと、梓さんはもとのにっこりとした笑顔に戻った。