「居ない時の為に鍵渡してるのに、使わなかったら意味無いじゃん。今なら俺が居るから、抵抗無いだろ? 予行練習だと思って、自分の鍵使ってみろよ」

「……うん。分かった」

私は玄関のドアを開けた。



「じゃぁね、涼」

「ああ、また明日な」

涼は笑顔でそう言って、自分からドアを閉めた。



私はバッグから鍵を取り出す。

自分の家以外で、誰かの家の鍵を掛けるなんて初めての事で、一瞬、戸惑う。



でも。

ドアの向こうで見守っている、涼の気配を感じていたので、私は恐る恐る鍵穴に鍵を入れて回した。