「……はい?」 握り締めていたバッグは、 あたしの手をすり抜けて 鈍い音と共に地面に落ちた。 「あの、冗談ですよね?」 あたしが今日から住むハズだった場所。 そこには、あたしと同い年くらいの男が既に住んでいた。 「だーかーら、俺は昨日からここに住んでんの。分かったらさっさと失せろ」 「失せろって……ここ、あたしん家――」 ――バンッ あたしが反論する前に、 彼に勢いよく玄関のドアを閉められてしまった。