腕時計に目をやると本当に時間ギリギリで、足早にマンションを後にした。 昨日の電話のことを言われるかと思ったけど、どうやら何も言う気はないらしい。 喧嘩とか、そうじゃなくても昨日の電話みたいな時だって、最終的に折れてくれるのはいつも奏次の方。 『大丈夫か?』 いつも私を甘やかし、 心配してくれる。 ――優しい奏次。 ねぇ、どうして。 そんな風にしてくれるの? 私はそれが、何となく聞けずにいる。 .