別にいじめられてたわけでもない。
ただなんとなく疲れたから。
中学3年、いわゆる受験生ってやつに、
疲れたのかもしれない。

毎日毎日塾三昧
無意味に怒鳴り散らす先生。
あたし達でストレス発散?
ふざけんな。

今ここから落ちれば
確実に死ねるだろう。
25階建ての廃墟になったマンション。

「ふぅ、、」

目を瞑って体を前へと
傾ける。
風を感じながら
落下していく。

うっすら目をあける。
地面までまだ距離がある。
すると、
確実に目の前に、
だけどぼんやりと

「人間…?」
ここは空。そんなわけがない。
ぼやけてたのが
はっきりとしてきた。
思わず目を見開く。
「翼?!」
まるで時間が止まったよう。
背に翼を持った
同じくらいの歳の男の子。
顔はわからない。
だけど、落ちていることさえ
忘れてしまうほど
…美しい