道中地蔵

私達は瞬き一つできず、身動きもできない。

首の無い武者達は、障子戸一枚向こうにいる。

こちらを伺っている様子。

やがて一人の武者の手が上がり、戸に手をかけた。

思わず叫び出しそうになったその時―。

障子戸に新たな影が映った。

その影は小さく、まるで子供のようだった。

武者達の動きが止まった。

小さな影に意識を向けている。

―やがて、武者達は向きを変え、廊下を再び歩き出した。

武者達の影が見えなくなると、二人は気絶した。

私は震えながらも再び障子戸に視線を向けた。

廊下は静かで、影も形も無くなっていた。




そして次の日。とんでもない事態になってしまった。

肝だめし派の部員達、全員が高熱で倒れた。

本来なら今日帰るはずだったが、肝だめし派は救急車で病院に行くことになった。

残った留守番派の私達も無事だとは言えなかった。

何故なら、全員が武者達の姿を見たからだ。

いや、ただしくは私と、私と同室だった二人は影しか見なかった。

しかし他の部員達は話によれば、武者達は部屋の中までやってきたらしい。

だが部員達の顔を見て、すぐに出て行った。

きっと違うことに気付いたんだろう。