夏の合宿。山に囲まれた田舎町で、3日間行われることになり、私以外の部員達は口々に文句を言った。

そこは確かに田舎だった。私が以前住んでいた町と良い勝負。

雑木林が辺り一面に広がり、そして2年ぶりにお地蔵さんの姿を見ることができた。

遊び場が一切無いことに部員達が絶望する中、私は表情に出さないながらも、お地蔵さんに会えた喜びで心が満ち足りていた。

1日目。合宿で忙しい中、時間を見つけてはお地蔵さんに会いに行った。

そのお地蔵さんは、山の中にある合宿場へ向かう途中の道の脇にひっそりといた。

こじんまりとしている姿に安堵感を感じた。

どこにでもあるようなお地蔵さん。

けれど何故かそのお地蔵さんの背後には、巨大な岩があった。

大岩を背後に立つお地蔵さんの姿はまるで、岩から私達を守っているように見えた。

2日目。今日は駅前の和菓子屋から買ったお饅頭とペットボトルのお茶を持って、お地蔵さんの所に向かった。

欠けて汚れた湯呑みを山の湧水で洗い、お茶をそそいだ。

そしてお饅頭を供え、しゃがみこんで手を合わせ、目を閉じた。

―この合宿が無事に終わりますように―と。