『えっなんで…弘樹さっ…』
『行こ,衣緒李。部屋どこ?』
あたふたする香苗ちゃんをよそに,
俺は衣緒李の手をひっぱった。
『…悪いけど,俺は衣緒李と別れる気なんか無いから。ごめんね』
香苗ちゃんにそう言い残し,
俺達はエレベーターに乗った。
『…大丈夫か?』
俺は衣緒李に言った。
勇人…
お前の言ってたこと,
どんぴしゃだ。
『うん,大丈夫。ありがとうね』
弱々しく笑う衣緒李を見ると,
今日の結果がますます話しづらくなる。
『あーなんか今日ごめんな?』
『なにが?』
『俺,衣緒李が見てると思うと
緊張してさ…
今日は皐樹さんもいたから
なおさら』
今思い出しても
恥ずかしい。
歴史に残る酷プレーだわ。
『うーん,あたしはいいんだけど…パパがイライラしてた…かな?』
言いにくそうにしながらも
ズバッと言う衣緒李。
『あーもうどうしよ…こんなんで結婚できんのかな,俺達…』
『大丈夫だよっ愛があれば!!』
衣緒李が拳を突き出す。
『…なんかお前,ご機嫌だな』
『うんっ今日は久々にみんな揃ったから嬉しくってさ』
『…人の気も知らないで……』
『ん?何?』
『何も無ぇよっ』
そこで,エレベーターの
ドアが開いた。


