『越智最近動き鈍いぞー?ダッシュ5本プラスしとけー』
『はいっ』
今は,遠征先で練習中だ。
なんか早速注意されてる俺だけど泣。
…でも,確かにコーチの言うことは正しい。
最近,なんか俺
動けてない。
『どしたんスか越智さん。しっかりして下さいよぉ』
『…お,おう』
俺に声をかけてきたのは勇人だった。
コイツにはよくカバーしてもらってるから,でかい口も聞けなかった。
『よーしじゃあそろそろ終わるぞー』
コーチの一声で,皆が一斉に片付けにかかる。
そんななか,
『お疲れさん』
俺は監督に声をかけられた。
『お疲れ様っス』
『お前最近どうした?スランプか?』
『や,なんでもないっす。すみません』
『なら,いいんだけどな。こんな状態が続くようじゃ,2軍に降りることも考えてもらうぞ』
『えっ』
2軍…?
4番の俺が……?
『まぁ,そういうことだ。しっかりやってくれよ』
監督が直々に
2軍落ち宣言なんて…
…笑えねぇよ。
とてもじゃないが,衣緒李には絶対言えない。
俺はとぼとぼと遠征先のホテルに戻った。
口からは,ため息しかでてこない。
フロントでキーを受け取り,部屋へ向かう。
『あっ越智さーん,これから一杯どうスか?』
西野の誘いも断る。
今夜はとても,そんな気になれなかった。