『弘樹〜聞いてっ』


衣緒李が興奮したように言う。


『どうしたの?』


『勇人に彼女が出来たんだって!!モデルの鈴音(スズネ)ちゃんらしいよ』


その手には週刊誌が握られている。



『へぇ,そうなんだ』


『幸せになるといいね!!』


『うん。……てかさ,今日くらい元カレの話はやめよう?笑』


『あっ…ごめん』



今日は俺達が付き合いはじめて1ヶ月記念日。


『はい,これ。プレゼント』


俺は小さな箱を差し出した。


『えっ?!』


衣緒李が意外そうな顔をしつつも受け取る。


『開けてみて』


『でも…,あたしなんにも用意してないよ?』


『い―の,それ安物だから』


衣緒李の細い指がリボンを解き,箱をあける。


『…っかわいい!!』


俺がプレゼントしたのは細いシルバーの指輪だった。


勇人とのペアリングがはまっていない薬指が,なんだか寂しそうに見えたから。


『ありがとう弘樹!!大事にするねっ』


衣緒李が喜んでくれてよかった。




『で,お返しのチューは?』


わざと意地悪っぽく言ってみる。


『え〜?しょうがないなぁ。目ぇつぶって?』



ちゅっ




唇に柔らかい感触。


やっぱり…すごく愛しい。


『衣緒李,好きだよ』


『あたしも!!』