いつでも逃げられる

「遅くなってごめんね、加奈子ちゃん」

彼は明るい声で部屋の中に入ってくる。

「さぁ、ご飯にしようか。お腹空いただろ?」

いつものように手際よく食事の準備をして、まずは私に食べさせる。

「ほら、あーんして」

「……」

まるで恋人同士のやり取り。

そんなやり取りが嫌じゃない。

最初は嫌悪感しか感じなかったこの行為が、不快じゃない。

「…お茶飲みたい」

「あ、そうか、ごめんね。今日も暑いから喉渇くよね」

平気で彼にわがままを言う自分がいる。

まるで恋人におねだりする彼女のように。

男に甘えたくなる自分がいる…。