さっきまで暖かいはずだったのに、
今では、その部屋だけ
冷たくなってしまったかのように、
寒かった。

指先が軽く
痙攣みたいなものを起こしてるが、

果たしてこの寒さなのか、
おちゃらけ野郎の威嚇に怯えているのか。

震えが止まりそうにない両手を
ぎゅっと握りしめて、
織の前に立つ。

「威勢がいいのは嫌いじゃないよ。」

おちゃらけ野郎が
口元を釣り上げて言葉を発する。

「絶望に立たされたときの顔が
 とてもそそるからね。」

楽しそうに笑う。
残忍に。

「悪趣味。」

脳内に浮かんだ言葉をそのまま発する。

「ふふふ。毒舌だねぇ。
 ますます見てみたくなったよ。」

おちゃらけ野郎が
そういって、私に人差し指を向け、
短く言う。

「行け。」

その言葉が合図となって、
おちゃらけ野郎の後ろに立っていた
手下っぽい奴らが私に襲いかかってきた。

「ぜってぇ負けない。」

小さく呟いて、
私は姿勢を低くしたまま
真正面に走り出した。