バイクが見えなくなって、
私は校舎のほうに体を向ける。

落書きがところどころある校舎は、
一目見ただけで
不良だらけなんだと思った。

すでに短いスカートを見下ろす。

「…。
 女がいたら不自然だよねぇ」

たった今気がついた問題に
途方にくれる。

「…。
 まあ、学校抜け出してる時点で、
 もうあれだね。問題児。」

開き直る。

そして、早く行こう。
あの馬鹿の所へ。

校舎のほうへ歩きながら
邪魔臭いブレザーの上着を脱いで、
腰に巻き、
ワイシャツの袖を肘までまくって、
胸元のリボンをとってポケットにしまう。

もう春の肌寒い風はなくて、
心地いい風が優しく吹いていた。

これから、
おそらく殴り合いの喧嘩をするであろう
私には不似合いすぎるくらいに。