「か、借りがあるのっ!」

「借り?」

「うん。」

何言ってるんだと思いながらも
次の言葉を考える。

「こっ、この前、
 助けてもらって、
 お礼を言ってなかったから、
 言いに行こうと思ったら、
 何か連れてかれたって聞いて、、」

次の言葉が見つからなくて
しどろもどろになってる私に
姉ちゃんはわかったとでもいう口ぶりで、

「ふーん。
 つまりお礼代わりに助けたいと。」

コクコクとうなずく。

「わかった。 
 じゃ、頑張れ。」

何とか機嫌を直した姉ちゃんに
私は安堵した。

「負けたら承知しない。」

ヘルメットの
ガラスのようなものから
透けて見える中の姉ちゃんの表情は
どこか意味ありげに笑っていて、
怖かった。

「し、死んでも負けないし!」

精いっぱいの虚勢を張って言い返した。

「ふうん。 
 今日は威勢がいいじゃん。」

姉ちゃんはそういうと
バイクのエンジンをかけなおした。

「健闘ってやつを祈ってるよ。」

左手をひらひらと振って、
姉ちゃんはバイクを発進させた。

バイクはすぐに見えなくなった。