「けど俺には歩くしかなかった。止まっても意味がないんだから。


どの位歩いたかな。多分、もう朝になってもおかしくない位歩いただろう。


そのうち灯りが見えたんだ。


俺は安堵と、喜びにまみれてその灯りに走って近づいてったんだ」


唐突に転校生はまた腕に顔を埋める。


俺はと言えば呆気にとられる他なかった。


まさか悩みを訊いてこんな話をされるとは思ってもなかったからな。


湧いたのは怒りを通り越して、呆ればかりだった。


「……で、その屋根裏から出て来てそのショックをまだ引きずってるって事か?」


「…くく」


転校生の体が小さく震えた。


確認は出来ないけど多分、転校生の眼は俺を向いている。












「……いや。俺が見た灯りは、街の灯りだった。


俺はまだ屋根裏から出ちゃいない。


委員長。あんたも屋根裏を見てみればいい。


クソみたいに広い世界が広がってるぜ?」





ー了ー