黒猫前奏曲

どうにか嫌がるマリアを引っ張るようにして、定休日であった店の軒先で雨宿りをする。

とりあえず、これ以上、濡れずにすんだわけだが、お互いビショビショであった。

道成は上着のパーカーを脱ぐと、うずくまっているマリアにそっとかけた。

マリアの様子は一向にして変わらないため、子どもの扱いが得意な久志に連絡して対応してもらおうかと考えたのだが、この雨だ。さすがに呼ぶことを躊躇してしまう。それもあるのだが、道成はいくら友達であったとしても、なぜかマリアのことに関して久志や弥生を頼りたくはなかった。

降りしきる雨の中、時々雷鳴が響き渡る度に、マリアは耳を塞いでいるにも関わらずビクッと体を大きく揺らす。

怯えるマリアを見て、道成は自分の無力さを痛感する。そして、悔しさから自分の拳を力の限り握りしめた。


―ブー ブー ブー


突然鳴り響く、雷とは異なるくぐもった音が響き渡り、道成は音の鳴る方へ視線を向けた。

そこには、雨によって変色された通学鞄があった。

道成は、マリアに悪いと思ったが、鞄から音の犯人である携帯電話を取り出すと、相手も確認せずに通話ボタンを押し、耳に当てた。