梅雨の季節がやってきた。

ジメジメして、時折イタズラみたいにゴロゴロと空は毎日のように変化するため、傘が手放せない時期であった。

下を見れば、道端には普段より多くのビニール傘があちこちで痛々しげに折られ、捨てられている。

まるで、“役立たず”と言われているようだ。

少し上に目を向ければ、真新しい同じようなビニール傘が手に握られ、雨除けとして活躍していた。
孤高の侍が屍の中を歩くように、マリアも傘の屍の中を、ビニール傘ではない、中学から愛用している真っ黒な傘でその道を歩いていった。

周囲では、雨にも負けず、登校する高らかな笑い声が響いていた。