立ち向かうより、逃げる方が簡単だとよく言うが、本当にそうなのだろうか?

マリアは立ち向かうより、逃げる方が寧ろ勇気がいると思っている。

確かに、立ち向かうのは気持ちを奮い立たせ、強くいなくてはとても反論なんてできやしない。

それに代わって、逃げることは目を背けるだけでいい。

そう考えれば逃げることは、立ち向かうことより遥かに楽だろう。


だが、逃げることは何もそこから生まれない。

“当たって砕けろ”という諺があるように、何かアクションをおこせば、フィードバックが起きるが、逃げたことにより何も起きなくなる。
そして、マリアが逃げれば逃げるほど、影のようにマリアのことを闇へと誘(いざな)うのだ。また、時には、マリアの近くで影を潜め見つめており、時々頭角を現すかのように猛威を振るった。

立ち向かって、そのまま玉砕された方が、幾分もマシであったにも関わらず、マリアはそれを選択せず、逃げる道を選択した。

それが、マリアのあの時の最善の選択であり、今でも後悔はしていない。

そう、自分に言い聞かせていた。