黒猫前奏曲

「おかえりなさい、2人とも」

マンションの扉を開けると、美味しそうな匂いと共に、優しそうな笑みを浮かべた女性が玄関に現れた。

「ただいま、絵里子」

「お邪魔します、絵里子さん」

口々に挨拶を済ませ、リビングへと向かう。

「いらっしゃい、マリアちゃん」

「また、一段とお腹が大きくなりましたね」

「そうなの。無事に成長している証拠ね」

柔和な微笑みを浮かべる、高沢の嫁、絵里子の腹は妊婦であることを容易にさせていた。

「体調はどうですか?」

「心配してくれてありがとう。でも、毎日毎日家にいるだけで、とっても退屈なの。喫茶店にいる時はそんなに感じなかったのにね。だから、今日マリアちゃんが遊びに来てくれて嬉しいわ」

ありがとう、と微笑みながらお礼を言われてしまい、言われなれていないマリアは戸惑ってしまう。
笑いをこらえながら高沢はマリアに助け舟を出した。

「よかったな。でも、マリア。言ったとおりだっただろ?」

同意を求めるように高沢はマリアに問い、マリアが頷くと、疑い深い目を向けて絵里子が高沢を睨みつけた。

「なに、あなた?マリアちゃんに変なこと言ったの?」

「なんでもねぇよ」

高沢はその言葉を濁す姿を見て、マリアは、やっぱりかかあ天下か…、と笑みを深めるのであった。