黒猫前奏曲

「仕方ねぇ。惚れた弱みだ」

照れながら、本心を伝える高沢が、マリアは正直、格好いいと思ってしまった。

「ボス、幸せそうだね」

「あぁ。チビも産まれることだしな」

立ち上がり、大きく伸びをしながら話す高沢は、パパになる日が近いのだろうか、優しい笑みを浮かべる。

「名前決まったの?」

「まだだな」

先ほどの笑みが消え、ぶっきらぼうに答える。

「そういえば、男の子?女の子?」

「わからねぇ。俺も絵里子も俺たちの子として産まれてきてくれるだけで、十分幸せだから、正直どっちでもいいんだ。だから、名前も産まれた後に決めると思うぞ」

マリアは高沢の説明に納得し、頷いた。

「じゃあ、性別も名前もまだわからないのか…」

マリアが考えるように呟くと、あぁ、と上の方から声が降ってきた。

「楽しみだね」

そう言うマリアに、高沢は寂し気な笑いを浮かべ、

「そうだな」

と、マリアの頭をゴシゴシと撫でた。