黒猫前奏曲

マリアとしては、ただ単に倒され落ち込んでいる道成を撫でただけである。

だが、高沢と阿久津は、“あのマリアが?”と思い、久志と弥生は“あの道成が黙ったまま頭を撫でられている?”と、考えは違うのだが、有り得ない状況にただ見つめているしかなかった。

「その前に、立てる?」

マリアが道成を気遣う言葉をかけると、

「あぁ」

と、道成も言葉を紡ぐことが出来ず、吐く息に言葉をのせるのがやっとであった。

「そう、ならよかった。あなたたち、彼を連れてって。そして、もう二度とここには来ては駄目」

道成とその横にいる2人を見て、諭すようにマリアは話す。

道成はゆっくりと立ち上がり、倒れたテーブルをチェアを元のように直すと、道成は顔を下に向けたまま去っていった。

マリアの横を通り過ぎた際、

「悪かった」

と、弱々しいいつもの彼と間逆な彼がいた。

その後を、久志と弥生がこちらに一度だけ頭を下げ、道成を追うように出て行った。