黒猫前奏曲

「ボス、今日は寺井さん来ないよね?」

確認のために、一人堂々と立つ高沢にマリアは尋ねた。

「あぁ、寺井はテスト週間で今週は来ないぞ」

先ほどとは全く異なる空気を纏った高沢に、道成を始めとする3人は驚きを隠せなかった。

「なら、寺井さんの服借りとくよ。明日、洗って返しにくる」

黒のワイシャツは先ほどと変わらないが、サイズが違うのか、七分袖ではなく手首の痣まで隠れるくらい覆われていた。

「マリアちゃん、大丈夫なの?」

「はい。特に大丈夫です。しかし、一体何をやっているのですか?」

奥に進むにつれ、道成が倒れている姿が目についた。

「少しお灸を据えただけだ」

高沢が答えるが、これが少しというレベルなのであろうか。

マリアは首をひねるが、考えても無駄なので、道成に近づき、目線が合うようにかがんだ。

「もう痣のことは、気にしてないから。だから、もう帰った方がいいよ」

マリアは道成の頭をゆっくり撫でた。

その行動にマリア以外の誰もが固まり動かなかった。