道成は発しようとした久志の声を制止させる。

「高沢さん、阿久津さん。マリアに痣を作ったのは俺だ。悪いと思っている」

道成は高沢の目をきちんとみて、謝罪の言葉を述べた。

「どうして、あんなにはっきりと掴んだんだ?」

何も言わない高沢に、阿久津は横から疑問を投げかける。

「話がしたかだけだったけど、マリアが逃げたがら」

「腕を掴んだと?」

道成が言い終えない内に、高沢が言葉を続けた。その声は、地を這うように低かった。

「はい。悪いと思っています」

滅多に聞くことのできない、道成の敬語に久志も弥生も目を丸くした。
だが、相手が高沢なら納得もできた。

「二度とマリアに近づくな」

高沢は眉間にシワをよせながら、道成を後ろに思いっきり突き飛ばした。

ガランガランという音と共に、道成が喫茶店内に置かれている少し年期の入ったテーブルにぶつかった。

「あ~ぁ」

呆れたように呟く阿久津と

「大丈夫か?」

と、慌てて駆け寄る久志と弥生。

「一体何の音?」

音に気が付いたマリアが奥から顔を出した。