「“あの”ってなによ」

訳が分からないマリアは一番話しかけさそうな弥生に尋ねる。

「阿久津さんは有名なんだよ…北高では」

「ふ~ん。どうしてですか?」

この横で優しく笑いながら、マリアの頭を撫でる阿久津が有名だとは信じがたい。

「生徒会長とかしてたのですか?」

弥生には聞かず、敢えて本人にマリアは尋ねることにした。

「う~ん。そういうことにしといて」

阿久津はポンポンと苦笑いしながら言うためマリアは、

「わかりました」

とだけ言っておいた。

「マリアちゃんは本当に優しい子だね」

そう言われたため、気恥ずかしくなる。

「痣、隠してくる」

マリアは、カウンター横の通路口から出て行った。