黒猫前奏曲

「あ~ぁ、女の子に痕付けるなんてサイテーだよ、道成」

高沢の視線を回避したいのか、久志はわざわざ流し目で道成を見ながら、名前をはっきりと言った。

「道成ということは西高の“ボス”か」

今まで何も言わなかった阿久津が呟いた。さすが、西高の後輩だから名前を知っていて当然なのだろう。

「西高の“ボス”は道成で、喫茶店の“ボス”は高沢さんということか」

阿久津の言葉にマリアは1人納得する。
後輩ならもしかしたら、道成たちも阿久津のことをよく知っているのかもしれない。しかし、この空間が優しい雰囲気ではないことから、初対面であることが容易に想像することができた。

「マリア!俺はボスじゃないと何度言わせればわかる!!」

高沢がマリアに怒鳴りつけるが、目はマリアを見ずに、道成に向けていた。

「おい、道成とやら。一つ聞きたい」

「はい」

いつもの無愛想な態度ではなく、きちんと応対している道成が何だか違う人に見えてしまう。

「マリアの手首の痣はお前の仕業か?」

しばらく沈黙が続き、はい、と道成が口を開いた瞬間、高沢の手は道成の胸ぐらを掴んでいた。