黒猫前奏曲

―カラン

軽快なドアベルが、客が来たと合図を送る。今までのピリピリした雰囲気は止むが、高沢と阿久津は、まだぎこちない表情でドアに顔を向ける。

どうやらマングースは現れたらしい。阿久津がこれ以上攻められないとマリアは安堵し、

「いら」

しゃいませ、客を迎えようとする。しかし、客に失礼だと思ったが、言葉が続かなかった。

「珍しい…俺達の後輩が来るなんて」

感心したように阿久津は話し、目線を高沢に投げかける。

そこで、マリアは初めて阿久津が西高出身であることを知った。

そして、その西高の制服を着た3人は、堂々とした態度で開け放たれたドアの前に立っていた。

「あいつ…この前いたガキだな」

3人を見るために目が左から右へ流れた高沢な目が、一番右にいた久志を捉えた。

「あぁ」

マリアはなぜここに3人が着いてきたのかはわからないが、とりあえず、高沢の問いに短い返事で答える。

「あ!?マリアちゃんがいた!」

柱が死角となり、ドアからは少し見えにくい場所であったが、弥生はすぐに気づき、近づいてきた。

「痣、大丈夫だった?」

マリアに聞きながら、痣の場所を確認するように、手首を見た瞳が大きく見開かれた。

「マリアちゃん、これ!!」

バイト着が7分袖だったこと、そして、逃げることに神経が集中し、痛みのない手首に気付くことができず、咎められないように隠蔽し損ねたという二重のミスにより、手首の手で掴まれた痣は、誰がみても一目瞭然であった。