「お前、名前は?」

目を開けるのが億劫なのか彼は瞳を閉じたまま尋ねる。
でも、本当は情けない姿を見られたくないのだと何となくわかってしまった。

そんな彼を可愛いと思い、私はつい名前を教えてしまった。

「ブラックキャット」


「ブラック…キャット?」

当然の如く彼の声は疑問系であった。なんとも当たり前の反応が返ってきて嬉しかった私はクスリと笑みを浮かべる。

「そう。私の愛称。また、機会が会ったらどこかで会いましょうね」

私はそう言うと、公園を立ち去った。

後ろから「待て」だの「本当の名前」だのと抜かしていたが、どこ吹く風かと思い耳も傾けずそのまま家路に着いた。

今日の散歩が終わった。